こんにちは、ぷらっとホームの清水です。
今回のブログは、書く内容に悩んでいたところ、年度の始まりということもあり「趣味の読書から、日常で3冊、仕事で3冊、影響を受けた本を紹介してみてはどうか?」とアドバイスをいただいたので、書いてみたいと思います。
そのときはすぐに書けるかと思ったのですが、実際に本を選ぶのは大変で本棚や電子書籍のアプリをかなりの時間見返すことになりました。
その中から、日常編は比較的若い頃に読んだ本を仕事編は社会人になってから読んだ本を中心に、いくつか紹介させていただきます。
仕事編
趣味の読書からの紹介ですが、まずは(一応)仕事のブログということでビジネス寄りの本を3冊、ご紹介したいと思います。
岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』

社会人になってから読んだ本の中で、まず1冊目はこちらです。
ビジネス書や自己啓発書はあまり読まないほうなのですが、この本は例外です。
アドラー心理学を対話形式でわかりやすく解説した一冊で、「他者の評価を気にしすぎない」「課題の分離」という考え方が整理されています。
▼概要
『嫌われる勇気』は、岸見一郎・古賀史健によるアドラー心理学の入門書。「青年」と「哲人」の対話形式で、トラウマの否定、課題の分離、承認欲求からの解放など、アドラー心理学の核心をわかりやすく解説する。2013年刊行のロングセラー。
特に印象に残っているのが「課題の分離」という概念です。
他人の課題と自分の課題をはっきり区別するという考え方で、「相手がどう受け取るかは相手の課題であり、自分にはコントロールできない」というものです。
営業の仕事をしていると、つい相手の反応を過剰に気にしてしまうことがあるのですが、この視点を持ってからは少し楽になりました。
タイトルの「嫌われる勇気」というのは、無理に好かれようとするのではなく、自分の考えをきちんと伝えることへの勇気、という意味だと理解しています。
ジェフリー・ムーア『キャズム』

仕事寄りの本でいうと、この本はかなり分かりやすく印象に残っています。
新しい技術や製品が普及していく過程で、「初期ユーザー」と「一般層」の間に大きな溝(キャズム)がある、という考え方です。
▼概要
『キャズム』は、ジェフリー・ムーアによるマーケティング理論書。ハイテク製品が「イノベーター・アーリーアダプター」層から「アーリーマジョリティ」層へ普及する際に直面する大きな断絶(キャズム)を分析し、その越え方を解説する。1991年刊行、テクノロジービジネスの必読書として知られる。
IT企業で営業をしていると、「良い製品なのになぜ広がらないのか」という場面に出くわすことがあります。この本を読んでから、それが製品の質の問題ではなく、市場の構造的な問題である場合が多いということを整理できるようになりました。
単純に「良いものを作れば広まる」というわけではなく、どの層にどう届けるか、どう伝えるかという視点の重要性を意識するきっかけになりました。
マルク・レビンソン『コンテナ物語』

コンテナひとつが、どのように世界の物流を一変させたか、というノンフィクションです。
▼概要
『コンテナ物語』は、マルク・レビンソンによるノンフィクション。20フィートの鉄の箱「コンテナ」の標準化が、港湾・船舶・物流・国際貿易の仕組みをいかに根本から変えたかを描く。単なる技術史ではなく、標準化と相互接続が社会・経済を変革するプロセスを丁寧に追った一冊。
鉄の箱そのものは単純な発明ですが、それが標準化されることで港湾の仕組み、船の設計、労働形態、国際貿易のルールまでが根本から変わりました。
技術の話というより、「標準化と相互接続が社会を変える」という構造の話として読みました。
IT機器を扱う仕事でも、標準化やプロトコルの重要性を日々感じていますが、その感覚がこの本を読んでより明確になった気がします。
「地味な仕組みが世界を動かす」という視点は、今の仕事にも直接つながっています。
日常編
それでは、ここからは完全に趣味の範囲ですが、日常で感銘を受けた本を3冊、ご紹介したいと思います。
星新一『声の網』

小学校の頃、一番最初に読んだ文庫本が星新一だったと思います。
1,000作以上のショートショート(文庫本で数ページから数十ページ)で多岐にわたる作品を書かれていますが、注目すべきなのは、小説内での未来予測が現実にかなり近い形で実現している点にあると思います。
特に顕著なのが、今回紹介する『声の網』です。
▼概要
『声の網』は、星新一によるAI・情報社会を予言した連作短編集。電話1本で生活のすべてが完結する近未来、中央コンピューターが人間の秘密を握り、密かに監視・統制していく様子を描く。便利さと引き換えに平和が維持されるディストピア的結末は、現代のネット社会そのものを先取りしている。
1970年刊行で、インターネットもまだない時代に通信ネットワークが社会の前提になった世界を描いた作品ですが、今読むとかなり現実に近い内容です。
便利な仕組みが広がるほど、それに依存せざるを得なくなる構造は、現在のシステムにもそのまま当てはまります。インターネットが登場した当時も、自分の中で違和感なく受け入れられたのは、この本を読んでいた影響もあるかもしれません。
筒井康隆『旅のラゴス』

星新一と並行して、小学校時代に読んでいたのが筒井康隆でした。
エンターテインメントから純文学まで幅広い小説を書かれているので、どれか1冊を選ぶのは大変でしたが、自分の好きなテーマの一つである「知らない土地や習慣の違う場所を旅するもの」の原点がこの小説だということで選びました。
▼概要
『旅のラゴス』は、筒井康隆によるSFファンタジー連作長編。高度文明が崩壊し、人々が超能力(転移、壁抜けなど)を持つ世界で、男ラゴスが各地を旅する物語です。奴隷に堕ちるなどの危機を乗り越え、古の知識を求めて北から南へ、そしてまた北へと旅し続ける波乱の人生を描く、冒険と漂泊の物語。
物語としては、計画通りに進むことはほとんどなく、その場その場で適応していくしかない構造になっています。
これが、私の中の「物事は最初に決めた通りには進まない」という前提を自然に受け入れる感覚につながっています。
カート・ヴォネガット『スローターハウス5』

3冊目は、大学生になってから読んだカート・ヴォネガット・ジュニアの作品から選びました。
カート・ヴォネガット・ジュニアの小説は「人類に対する絶望と皮肉と愛情を、シニカルかつユーモラスな筆致で描き人気を博した」と評されていますが、『スローターハウス5』も自身の戦争体験がモチーフというシリアスな内容ながら、独特の文体で読みやすく、深刻になりすぎずに書かれています。
▼概要
『スローターハウス5』(Slaughterhouse-Five)は、カート・ヴォネガット・ジュニアのSF小説(1969年)で、ドレスデン爆撃のトラウマを抱え、時間旅行(タイムリープ)する主人公ビリー・ピルグリムの生涯を描いた作品です。戦争、異星人、過去・現在・未来が交錯する反戦SFの傑作です。
本作に引用されている「ニーバーの祈り」の一節は、何か悩んだときに思い出す言葉です。
「神よ 願わくばわたしに、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ。」
おわりに
今回、改めて本棚を振り返ってみましたが、若い頃に小説から得た「物事の見方」と、社会人になってから実務を通して得た「世の中が動く仕組み」が、自分の中で地続きになっていることを再認識しました。
本を選ぶ作業は予想以上に大変でしたが、結果として自分の読書遍歴を振り返る良い機会になりました。
年度の始まりにあたり、これらの本が教えてくれた知恵を再確認しながら、また新たな気持ちで業務に取り組んでいきたいと思います。
皆様にとっての「人生の一冊」も、機会があればぜひお聞かせください。
