【農業編】25年ぶりの田植え、2日→3時間半。この差を数字で分解してみた

みなさん、こんにちは。インサイドセールスを担当している小林です。

先日、InteropTokyoの展示会が終わったその足で実家に帰省し、翌日そのまま田植えを手伝ってきました。前日まで展示会場でネットワーク機器や来場者の対応をしていたのに、次の日には田んぼで長靴を履いている。この落差もなかなかのものでしたが、実に25年ぶりの田植えでもありました。

自分の記憶にある田植え機は、後ろから押しながら歩くタイプの「2条植え」でした。

ところが実家に置いてあったのは、クボタの「キュートEP4」。4条植えの、ちゃんと座って運転する乗用型でした。「うちの田植え、いつの間にこんなに進化してたの」というのが正直な感想です。

感覚だけで「ラクになったなあ」で終わらせるのはもったいないので、今回は数字で振り返ってみます。

田んぼからの眺めた榛名山

何が変わったのか:2条→4条、歩行→乗用

まず整理すると、変わった点は大きく2つあります。

  1. 条数が2条→4条に倍増:一度に植えられる幅が単純に2倍になった
  2. 歩行型→乗用型に変化:押して歩く方式から、座って操作する方式に変わった

条数が倍になれば、同じ面積を植えるのに必要な「往復回数」は半分で済みます。歩行→乗用の変化は、それとは別に「人間の移動そのものを機械がやってくれる」という質的な違いがあります。

クボタ キュートEP4というモデルの立ち位置

タチコマっぽさを感じる可愛らしさ

調べてみると、この「キュート」シリーズは2011年にクボタが発売した製品で、狙いがはっきりしています。

クボタの公式リリース(より「楽」な作業を追求した乗用田植機を新発売)によれば、「ウエルスター キュートシリーズ」は小規模農家向けに「軽量・安価・コンパクト」というコンセプトで開発され、乗用田植機としては発売当時、業界最安の価格設定だったとのこと。つまりこれは、うちのような「歩行型からそろそろ乗り換えたい」という層をまさに狙い撃ちした機種だったわけです。

面白いのは、同じリリースの中に「苗・肥料の補給時間は、田植え作業全体の約3割を占める」という記述があったこと。クボタ自身が、植え付けそのものよりも周辺作業に時間がかかることを織り込んで機種を設計していた、ということになります。これは後半の分析で効いてきます。

ちなみに、実家のキュートEP4は中古です。うちのような小規模な兼業農家の場合、農機具は基本的に中古で揃えるのが普通のようです。田植え機は年に数日しか使わない機械で、実際、うちも年間の稼働は2日間だけです。

25年前の記憶:2反で2日がかり、しかも体力勝負

自分の記憶では、歩行型だった頃は、同じ2反(20a)を植えるのに、土日を丸々使って2日がかりだったイメージがあります。当時、隣の田んぼではすでに乗用型を使っていて、子供心に「あっちはラクそうだな」と憧れていた記憶もあります。

母に聞いたところ、歩行型の頃は水の張った田んぼの中をずっと歩きながら押していたので、相当な体力を使っていたそうです。これは時間だけでは測れない軸で、体力的な負担は明らかに減っています。「かかった時間」と「かかった負荷」は別の指標なんだな、というのが今回最初の気づきでした。

今回、乗用型のキュートEP4で同じ2反を終えるのにかかった時間は、後述の通り3時間半でした。当時の「2日」が正確な作業時間の記録ではないので厳密な比較はできませんが、2日仕事だったものが半日もかからずに終わるようになった、というのが率直な体感です。この差がどこから来ているのか、後半で数字を追いながら見ていきます。

実測してみた:2反・3時間半の中身

2反目も終盤

今回、実際にかかった時間を計測してみました。

  • 面積:2反(20a)
  • 所要時間:苗を畑から運び出してから、片付けまでで3時間30分(210分)
  • そのうち、父が実際にキュートEP4に乗って作業していた時間は、体感で約3時間(180分)

180分の中身:ずっと乗りっぱなしではなかった

実際には、ずっと乗りっぱなしで走り続けていたわけではありませんでした。

  • 往復のたびに苗を積み込み:一往復して戻ってくるたびに、自分が苗を渡して父が機体に積み込む、という受け渡しが発生していました。前述のクボタの公式資料にあった「苗・肥料の補給だけで作業全体の3割」という数字は、まさにこの積み込みのことだったのだと、実際にやってみて腑に落ちました。しかも苗は育苗ケースの中でびっしり根を張っているため、そのまま渡せるわけではなく、根をはがす下処理が必要でした(詳しくは後述します)
  • 田んぼの両サイドはバックして切り替えてから植える:田んぼの両サイド(機械が旋回するためのスペース)は、通常の往復では植えられません。そのため最後に、バックして切り替えてから植えるという工程が必要で、ここが特に時間のかかるポイントでした。
キュートが旋回した跡

「機械が走っている時間」といっても、その中身は積み込みや端の処理を含めた実際の作業の積み重ねだった、というのが今回分かったことです。

実は「田植え+除草剤散布」の作業だった

苗をこまきちゃんを搭載したキュート

母に聞いたところ、以前は田植えが終わったあとに、除草剤を手作業で散布する作業を別に行っていたそうです。

今回使ったキュートEP4には、除草剤散布機「こまきちゃんmini」が搭載されていて、植え付けと同時に除草剤も散布できます。クボタの製品ページによれば、4条・5条植えの田植機に対応した除草剤散布機を使うことで、田植えと同時作業になり、手作業での散布が不要になるため、作業時間の短縮と省力化が図れるとのことです。

見方を変えると、この180分は「植え付けだけ」の時間ではなく、以前なら別の日・別の作業として行っていた除草剤散布まで含んだ時間だったことになります。「時間が伸びた」というより「別々だった2つの作業が1回に統合された」という話でもあります。以前の手作業での除草剤散布に具体的に何分かかっていたか、母の記憶にある正確な数字は今回聞けなかったので試算はできませんが、クボタの製品説明が「手作業が不要になる」と明言している以上、以前は確実に別枠の作業時間が存在していたはずです。現在の180分を、単純な「植え付けだけの時間」と比べるのはフェアではなさそうです。

見落としていた前提:本体作業だけでは回っていない

もう一つ見落としていた点があります。この180分、父は独りで完結していたわけではありません。役割はざっくり以下の通りで、機械が動いている間もずっと並行して動いていました。

  • :田植え機の操縦、植え付け
  • :苗の運搬、軽トラの運転、空いた育苗ケースの洗浄
  • 自分:苗の運搬、根はがし

ちなみに軽トラの運転を母が担当していたのは、自分が20年以上運転していないペーパードライバーだからです。役割分担は能力の得意不得意に応じて自然と決まっていた、ということでもあります。

畑で育った苗
苗は軽トラックに積んで田んぼへ

この苗は、育苗ケースに入った状態のものを購入することもできるようですが、うちは種まきから自分たちで育てています。畑にビニールシートを敷き、その上に水を張って育苗ケースを並べる、という方法です。この日運んでいた苗も、そうやって時間をかけて育てたものでした。

  • 稼働人数:3人(機械操作1人+並走支援2人)
  • 延べ作業時間:3人 × 210分 = 630人分(約10.5人時)
  • そのうち機械の稼働(本体作業)は180分と、経過時間の約86%を占めていた

本体作業(機械の稼働)が経過時間の大半を占めていても、それは2人の並走支援があって初めて成立していた時間、ということになります。

前日との比較:ボトルネックは「根はがし」だった

実はこの日の前日、両親二人だけで2反弱の田植えをしていたのですが、こちらは丸一日かかったそうです。

原因は、育苗ケースから苗を取り出す際に必要な「根はがし」という工程にありました。苗はケースの中でびっしり根を張っているため、そのままでは機体に積み込めず、根を引き剥がす下処理が必要になります。これがそこそこの力仕事で、前日は父がキュートEP4から降りて自分でこの作業をしていたそうです。

根はがしにはパワーが必要

つまり前日は、「植え付け→機械を降りる→根はがし→また乗って植え付け」を繰り返していたことになります。機械が止まっていた時間は、まさにここに集中していたと考えられます。

今回、自分がこの根はがし作業を担当したことで、父は機械から降りずに植え付けに専念できるようになりました。結果、面積はほぼ同じ(むしろ2反弱よりやや広い2反)にもかかわらず、前日の丸一日より短い3時間半で終わっています。

これは単に「人手が増えた」という以上に、機械の稼働を止めていた特定のボトルネック工程を、支援側がまるごと巻き取ったという、かなり具体的な改善事例だと思います。人を増やす場所を間違えなければ、これだけの差が出るということでもあります。

おわりに

体感では「乗用型になってラクになったなあ」くらいの感想で終わっていたところを、数字にしてみると、2日がかりだった作業が3時間半になった裏側には、除草剤散布の統合、3人体制での役割分担、そして「根はがし」というボトルネック工程の解消など、思っていた以上にいろいろな要素が絡み合っていました。

また農作業を手伝う機会があれば、乗車時間や各工程の時間をもう少し細かく記録してみようと思います。それでは、また次回。

田植えもラストスパート

参考

小林洋平

1983年の10月生まれ、出身は群馬です。
ぷらっとホームでは、主にインサイドセールスを担当していますが、わりと何でも屋さんな立ち位置です。
500円ガチャにはまったことがあり、デスクには戦利品が10品以上・・・クオリティが高いなぁと感心して、つい回し過ぎてしまいました。これ以上置けないので集めるのをストップ中です。
仕事が忙しくても、「自分がムリをしない」時間をきちんと作れるように心がけています。

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