はじめに
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」により、2020年頃から全国の小中高校の生徒1人に1台のICT端末とインターネット通信環境が導入されましたが、現在は次のフェーズであるGIGAスクール構想第2期(通称NEXT GIGA:ネクストギガ)へと突入しています。
NEXT GIGAでは初期のGIGAスクール構想から5年が経つため、生徒用端末の端末のアップグレードや、関連するネットワーク機器のリプレイスなどによる通信環境の改善なども視野に入っています。
2024年に文部科学省が発表した「学校のネットワークの現状について」によると、全国30,089校のうち、インターネット回線の推奨帯域を満たしているのはわずか6503校、全体の2割程度にとどまることが分かっています。この結果から、多くの学校が帯域不足に直面しており、インフラ改善が急務であることが明らかとなっています。
当社でも小中高校のネットワークインフラの設計や構築を担当されているお客様と接する機会が多く、NEXT GIGAにおけるネットワーク改善の手段についてお話を聞く事が多いので、今回の記事ではそれらの具体的な手段についてご紹介したいと思います。
NEXT GIGA改善への4つの手段
回線の強化
ネットワークインフラ改善の第一歩は、インターネット回線の強化です。帯域不足がオンライン授業やデジタル教材の活用を妨げている場合、まずは回線増強を検討しましょう。
最近では、コストパフォーマンスの高い10GbE対応の回線も選択肢に入るようになりました。また、安定した通信が求められる教育現場では、帯域保証型の回線を活用することも一つの手段です。これらのオプションを導入することで、学習環境に必要な帯域を確保し、通信の途切れや遅延を防ぐことができます。
WiFiアクセスポイントのリプレイス
ほとんどの学校では生徒用の端末はWiFiを使った通信を行っているため、校内のWiFi環境の安定性も重要です。旧式の無線アクセスポイント(AP)では、端末数が増加した際に通信速度が低下することがあります。教育現場では、WiFi 6対応のAPにリプレイスすることで、高速通信と大規模接続を両立できるほか、より効率的なネットワーク管理が可能になります。
DHCPやDNSなどの専用機(アプライアンス)の導入
ネットワークサービスを安定させるために、DHCPやDNSなどの機能を専用アプライアンスで運用する方法があります。
たとえば、DHCP機能においては、ルーターやL3スイッチではIPアドレスの払い出し可能数が明記されていないことが多いため、生徒用の大量の端末にIPアドレスを配布する場合には専用機の導入を検討する価値があります。これにより、IPアドレス配布時のトラブルを回避し、ネットワーク全体の安定性を向上させることが可能です。
また、DNSやDHCPの処理を専用アプライアンスに分散させることで、ルーターの負荷を軽減し、その結果として通信速度やネットワーク全体のパフォーマンスが改善されるというメリットもあります。
スイッチやルーターのアップグレード
ネットワークの中心となるスイッチやルーターの性能も、インフラ全体の品質に大きく影響します。古い機器をそのまま使い続けると、帯域幅やトラフィック管理能力が現状の利用状況に追いつかず、ネットワーク障害の原因となることがあります。
特に、次世代型のスイッチやルーターは、VLANやPoEなどの高度な機能を標準搭載しており、デバイスごとに最適な通信環境を構築するための柔軟性を持っています。VLANを活用すれば、生徒用端末と教職員端末を分離したネットワークを構築でき、セキュリティも強化されます。また、PoE対応スイッチを導入すれば、アクセスポイントやIP電話機器の配線がシンプルになり、設備管理の効率化も図れます。
さらに、ルーターのアップグレードによって、より多くのセッションを効率よく処理できるようになり、通信遅延や輻輳のリスクを軽減できます。これらの機器を段階的に導入・更新することで、ネットワーク全体のパフォーマンスを大幅に向上させることが可能です。
まとめ
文部科学省の結果からも明らかなように、多くの学校が推奨されるネットワーク基準を満たしていません。しかし、回線強化、無線環境の改善、専用アプライアンスの導入、機器のアップグレードなどを組み合わせることで、効率的に改善を進めることができます。
さらに、冒頭に紹介した文部科学省によれば、ネットワークアセスメントを実施していない学校が全体の約6割とまだ多くあるようですので、まずは課題調査をすることが推奨されています。
文部科学省が発行している「学校ネットワーク改善ガイドブック」では、具体的な改善方法が詳しく解説されていますので、こちらもぜひ参考にしてみてください。