はじめに
先日、会議室センサー4年分のデータをAIに分析させてみた記事を公開したところ、思いのほか反響をいただきましたので、早速第2弾を考えてみました。
実は手元にもう一つ、地味に集め続けていたデータがあります。
それが、2024年7月に公開した「ZabbixでIoTセンサーのデータをモニタリングする方法」の記事で構築した、温度・照度センサーのデータです。あの記事から、ちょうど1年10ヶ月ほど経ちました。
ちょうどよい機会なので、今回は蓄積した1年分のデータをAIに渡してみることにします。

なお、このセンサーは私自身の会社のデスクの上に置いてあります。つまり、ここから見えるのは「私が働いているフロアの1年」ということになります。
システム構成
まず今回のデータがどう収集されているかを整理します。
- センサー:オムロン環境センサー 2JCIE-BL01(温度・照度)
- IoTゲートウェイ:OpenBlocks IoT FX1(BLEで受信、zabbix_senderでZabbixへ送信)
- 監視サーバー:OpenBlocks IX9上でZabbix 6.0を動作
- 分析:Claude(チャット形式で対話)
構築時の詳細については以前の記事「ZabbixでIoTセンサーのデータをモニタリングする方法」にまとめていますので、興味のある方はそちらもご参照ください。
送信間隔は5分で、トラッパーアイテムとして温度と照度を蓄積しています。
データを取り出す前にやらかした話し
「1年分のデータを引っ張ってきて分析しよう」と意気込んでZabbixのWeb UIを開いたところ、CSVエクスポートのボタンが見当たりません。
グラフ表示の画面では出てこず、「表示形式」を「値」に切り替えると現れるのですが、こちらはデフォルトで最大1000件までしか表示できません。5分間隔で1年分ともなれば10万件規模なので、1000件制限では話になりません。
そこでDBから直接SELECTしようと方針を変えたのですが、ここで初めて、当時の設定がこうなっていることに気づきました。
ヒストリの保存期間:90d トレンドの保存期間:365d
つまり、構築から1年10ヶ月経っていたのに、最初の約10ヶ月分のデータはHousekeeperによってすでに削除済みだったということになります。1分粒度のヒストリにいたっては、直近90日分しか残っていません。
データを集め始めた頃は「いつか分析しよう」と思っていたのに、いざやろうとした段階で半分以上消えていたわけです。。。
ただ、幸いトレンド(1時間ごとのmin/avg/max集計)が365日分残っていたので、今回はこれを使って分析することにしました。

長期分析する予定があるなら、構築時点で保存期間を伸ばしておくべきだったというのが、今回の最初の教訓です。
データの取り出し方
Zabbixサーバー(OpenBlocks IX9)にSSHでログインし、MySQLから直接エクスポートしました。
mysql -u zabbix_user -p my_zabbix_db –batch -e ” SELECT FROM_UNIXTIME(clock) AS datetime, value_min, value_avg, value_max, num FROM trends WHERE itemid = 46292 AND clock >= UNIX_TIMESTAMP(‘2025-05-25 00:00:00’) AND clock < UNIX_TIMESTAMP(‘2026-05-26 00:00:00’) ORDER BY clock ” | sed ‘s/\t/,/g’ > /tmp/temp.csv
温度は浮動小数なので trends テーブル、照度は整数なので trends_uint テーブルから取得します。
num カラムはその1時間あたりのデータ受信件数で、5分間隔送信なので正常であれば12になります。これが少ない時間帯は、データ欠損や送信失敗が起きていたことを示す目印になります。
取得できたデータは以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 2025-05-25 ~ 2026-05-25(ちょうど1年) |
| レコード数 | 8,546行(1時間ごと) |
| データ取得率 | 97.5% |
| 欠損ブロック | 4箇所、合計約9日分 |
1年間の温度推移
まずは1年間の温度を素直に眺めてみます。

夏は高く冬は低い、当たり前と言えば当たり前ですが、こうして1年通して見ると振れ幅は思ったより大きいです。
- 最高温度:30.98℃(2025年8月17日 16時)
- 最低温度:16.50℃(2026年1月4日 8時)
- 年間平均:25.23℃
- 年間変動幅:14.5℃
8月のピーク時には30℃を超えていていますが、夏季一斉休業のため冷房を止めていたタイミングかと思われます。
もう一つ特徴的なのが、2025年12月末から2026年1月初旬の急降下、1月4日の朝に16.5℃まで落ちています。
これは年末年始の長期休暇で空調が完全に止まり、フロアが外気に晒されていた結果と思われます。
夏と冬で1日のパターンが「逆転」する
次に、1日の中での温度変化を、真夏(2025年8月)と真冬(2026年1月)で並べてみました。

夏:夜〜早朝(0-7時)が28〜29℃で一番暑く、日中(9-18時)の業務時間帯はむしろ27℃台に下がっています。
冬:夜〜早朝(0-7時)が20〜21℃で一番寒く、日中の業務時間帯は22〜23℃に上がっています。
つまり、「日中に温度が下がるのが夏」「日中に温度が上がるのが冬」という、屋外環境では絶対にあり得ないパターンが見えています。
これは空調がしっかり仕事をしている証拠で、外気の影響を素直に受ける環境(窓際や屋外)ではこのような結果にはなりません。「うちの空調、ちゃんと効いている」というのを、改めてデータで確認できた瞬間でした。
平日と休日で「働く時間」がくっきり分かれる
続いて、平日と休日に分けて、時間帯ごとの温度・照度をプロットしてみました。

温度(左)は、平日が朝9時を境にグッと上がり、夕方17時頃にピークを迎えて、そこから緩やかに下がっていきます。一方、休日はほぼフラットで、平日昼間より0.5℃ほど低い水準で安定しています。空調のON/OFFがそのまま反映されています。
照度(右)はもっと劇的です。平日は朝7時頃から立ち上がり、9時には210luxに到達、20時頃まで明るい状態が続きます。休日はほぼ0luxで、完全に消灯しています。
1日のうちで人が活動している時間帯が、照度センサー越しに丸見えになっています。
なお、弊社の定時は9:30〜18:00ですが、8時台から照度が立ち上がり、19〜20時台もまだ明るい状態が続いています。始業前にデスクに着く人と、定時後も残っている人の両方がいる結果と読めます。
ヒートマップで見えた「火曜の謎」
曜日×時間でヒートマップを作ってみたところ、想定外のパターンが浮かび上がりました。

注目していただきたいのは、火曜だけ6時台が他の曜日より明るいという点です。月・水・木・金は6時台にはまだ真っ暗(0〜十数lux)なのに、火曜だけそこに薄っすらと色がついています。
念のためデータを掘ってみると、
- 火曜6時台に100lux以上を記録した日:52回中23回(約44%)
- 他の曜日の6時台に100lux以上を記録した日:月0回、水0回、木0回、金0回
つまり、ほぼ毎週火曜の朝6時台にだけフロアの電気がついているということになります。他の曜日には一切起きていない、火曜限定の現象です。
深夜0〜5時の照度は完全に0なので、夜通し残業しているわけではありません。前日の月曜23時に明るかったケースもほぼないので、月曜の延長線でもなさそうです。
となると、毎週火曜の早朝に誰かが出社しているか、定期的な何かがあると考えるのが自然です。
火曜の6時台に明るかった日をカレンダー上にプロットすると、以下のようになりました。

5月〜11月初旬まではほぼ毎週きれいに点灯していますが、11月中旬以降、急に頻度が落ちています。これも興味深い点で、何かしらの定期業務が冬季に縮小されたか、あるいはスケジュールが変わったのかもしれません。
仮説としては、
このセンサーは私のデスク上にあり、フロア全体の天井照明の光を拾っているので、「誰か個人」ではなく「フロア全体の照明がついた」という事象を捉えていると思われまが、ここは謎が残りました。
最後に帰る人は何時に電気を消したのか
照度から「点灯開始時刻」が見えるなら、当然「最終点灯時刻」も見えるはずです。各平日について、その日の最後に100lux以上を記録した時刻を集計してみました。

中央値は20時で、9割近くの日は21時までには消灯しています。これは「だいたい定時後2〜3時間以内にフロアの電気が消える」ということで、極端な残業文化ではないことが数字でも見えます。
一方で、
- 22時以降まで点灯していた日:30日
- 23時以降まで点灯していた日:13日
これらの「深夜まで残業組がいた日」を見ると、興味深い偏りがありました。23時以降まで点灯していた13日の曜日内訳は、
- 月曜:2日
- 火曜:4日
- 水曜:4日
- 木曜:1日
- 金曜:2日
火曜と水曜に集中しているのがわかります。週の前半でドライブをかけて、後半は落ち着く、というタイプの働き方が見えます。月曜と金曜が少ないのは、休み明けと週末前に向けて自然とブレーキがかかるオフィスの空気を反映しているのかもしれません。
そして23時まで残った日付を眺めると、3月以降に多い(2026年3〜5月で8日)のも面白いところです。期末・年度末の追い込みや、新年度開始後の繁忙が続いているのかもしれません。
おわりに
自分のデスク上に置いたセンサー1個でも、1年分溜め込めば「私のオフィスの定点観測レポート」として読み解けることがわかりました。空調の効き、出退勤のパターン、残業の癖、年末年始の冷え込み、そして火曜の謎の早朝点灯。いずれも社員としてなんとなく感じていたことがデータで裏付けられたり、逆にデータからしか見えない発見があったりして、意外と面白いです。
会議室センサーの記事と同じく、IoTで取ったデータを「可視化して終わり」ではなく、「AIに読み解かせる」段階に進む時代になってきているのかと思います。

OpenBlocks IoTシリーズで取れるデータは温度・照度に限らず、湿度・CO2・人感・ドア開閉・電力消費など、様々な種類に対応しています。それらを時系列で保管できる仕組みに蓄えておけば、後からこういう形で活用できる、という事例の一つとして読んでいただければ幸いです。



